『祖母のりんご』の使い方
『祖母のりんご』。これは、多摩市の小学五年生の道徳の教科書に載っているお話です。祖母の認知症に困惑する主人公に対し、父は「認知症になってもおばあちゃんは家族だ」と話します。あるとき主人公が熱を出すと、おばあちゃんは以前のようにりんごをすってくれます。主人公は「今度は私がおばあちゃんにしてあげる番だ」と決意するところで終わります。
物語のあとには、家族ってどんなものだろう?家族のために何ができるだろう?と、子どもたちが考えるよう促しています。
これを読んだとき、ヤングケアラーの子どもはどう感じるだろう、もっと頑張らないとと追い詰めることにならないかと考えさせられました。
多摩市ヤングケアラー実態調査によると、子どもたちは、家族のことは家庭の中でどうにかしないといけないと考えることがSOSを出しにくかった要因だとわかっています。
埼玉県ではケアラー支援条例を制定し、学校の授業に少しずつヤングケアラーの視点を取り入れて学びを行おうとしています。
『祖母のりんご』が道徳の教材ということから、授業では家族の素晴らしさ、家族への献身を教えたい時間かもしれません。
しかし、今を生きる子どもたちに大切なのは、学校の先生には家族のことも相談していいことや、家族も自分も両方大事にする選択肢があるといった現実的に必要な情報です。そして、背負いきれない責任を子どもが負う必要はないのだと安心させることが重要です。
9月の一般質問では、教育委員会から、埼玉での取り組みを定例校長会で紹介していきたいという答弁がありましたが、ケアをする生活が当たり前になっているヤングケアラーの子どもたちも含めて、全ての子どもたちに必要な学びです。
そして、その学びをより深めるために、子ども本人もおとなも子どもの人権を学ぶことが不可欠なのは言うまでもありません。