希少な湿地環境を未来に残すために~予算決算特別委員会で修正案を提出

 2024年度は、環境との共生を重点的なテーマとする「第六次多摩市総合計画」や、気候市民会議など市民と共につくった「みどりと環境基本計画」取組みの初年度です。環境と人権に重点を置いてきた私たち会派は、地球沸騰化と言われる状況下で、特に未来の世代によりよい多摩市の環境を残していく予算提案かという視点で審査を行いました。

さて東京都の50番目の保全地域に指定された多摩市連光寺六丁目の湿地には、多摩市では見る機会の少ないヘイケボタルやホトケドジョウほか、希少といえる動植物が生息・生育しています。またアメリカザリガニなど侵略的外来種などがいないことも保全の大きな理由となりました。湿地は保全地域の中でも動植物保護区域とされており普段は閉鎖されていますが、都の承認団体の皆さんは靴底を介していきものや種子を湿地に侵入させないよう、靴を履き替えるなど配慮して保全活動を行っています。

指定当初からこの集水域の保全は不可欠とされており、2021年度、多摩市は保全地域内の最上流の畑などおよそ16.000㎡を2億4千万円で取得しました。また、それに伴って改定された都の保全計画では、用地取得前の状態と同じ農地活用が望ましいとあるため、多摩市は市政初めてとも言える「農業公園」設置を決め、活用するための基本設計委託料を2024度予算に計上したのです。

しかし基本設計にあたって前提となる公園の理念には、本来土地の取得目的であった湿地の保全については何も触れられておらず、むしろ予算資料では「都市農業推進事業」として記載されています。稲城市との市境ともいえる場所にある市の公園内で、市民が農に親しむ場を指定管理者が経営・運営する場合の施設整備を問うと、管理棟、資材置き場、更衣室、トイレ、販売所、駐車場などを考えているとのことでしたが、わざわざ集水域の土地を買ってコンクリートで覆うことや、販売目的となれば薬剤散布などはどうなのか…下流への影響を心配するのは私たち会派だけではなく、自民党会派の議員も「本当に影響はないのか」と質疑しました。

上記を含む基本設計が、湿地の保全に資するものとなるのか、現時点では何の保証もありません。予算審査冒頭の総括的質疑で指摘すると、環境部長は「それは年度内に作成する構想に明記される」と答弁しましたが、その構想は未だ議会にも公表されていないのです。
また質疑では、その構想策定の過程において、湿地環境保全に必要な知見、水や水生生物、陸生・水生貝類などの環境の専門家に全く関わってもらわなかったこともわかりました。湿地環境の保全は手探りだからこそ、広範囲の専門家が必要であり、その方々と連携できる体制が欠かせないのは明らかです。

湿地では東京都、都のコンサル、各方面の専門家、市民団体(承認団体)、サポーターのほか、聖中や多摩大附属とのコーディネーターも加わり、年度計画の下でともに意見交換し確認しながら、少しずつ保全活動を進めてきました。農業公園をその上流に設置するなら、もっと対話をしてから基本設計へと進めるべきではないかと考え、私たち会派は岩永、折戸、白田議員とともに修正案を出しました。
修正案は否決となりましたが、ほかにも何人もの議員の皆さんが農業公園予定地に足を運び、何が起きているのか知ろうとしてくれました。この問題提起を議会全体が次に活かしてくれたらいいなと感じています。
多摩丘陵の昔ながらの環境が残っている湿地、また湿地を湿地たらしめている周辺環境を子どもたちへと残していくために、私たちおとなは何ができるのか。これからも学び注視していきます。

(写真は稲城市境の尾根を臨む農業公園予定地と、湿地で年度末に開かれる都と専門家、市民との調査報告会。現地を見て意見交換して次年度の活動計画と分担を決めていきます。)