視察報告  生活困窮者自立支援制度と課題 ~子どもへの支援を中心に~

新潟県立大学で行われた第11回生活保護問題議員研修会「地方から生活保護行政は変えられる! いのちを守る自治体に」に参加しました。

最初に、いわゆる貧困当事者の子どもについてのDVDを見ました。母子家庭で、母親が精神病を病み、ご飯を食べて、お風呂に入り、掃除をして身の回りを整える生活を送ることが難しくなった兄弟、それぞれが主人公になった話でした。兄の方は、家庭での生活を助けるため、学校に行ける日が少なくなります。中学3年生で卒業後、働こうと考えていましたが、支援学習塾で出会った人たちのアドバイスと精神的な支えで、無事夜間高校に入学します。弟はお風呂に入れておらず、洗濯された服が着られない、また母の不安が大きくなると母親が学校に乗り込み暴れてしまうことから、いじめを受けて苦しみます。しかしクラスで気にかけてくれる子や先生が変わり、クラスでまたやっていこうと、どちらの兄弟も逞しくしなやかに生きていきます。一見問題行動としか見えない行動も、実は貧困と結びついており、そうしなければ生きていけないということがよくわかるDVDでした。

日本では生活保護基準以下の低所得世帯数に対する被保護者世帯数の割合が年々上昇していますが、生活保護の利用率や捕捉率は、ドイツ、フランス、イギリス、スウェーデンに比べ低いのが実情です。そして従来手薄であった生活保護手前の生活困窮者に対する新たなセーフティネットとして、生活者困窮支援自立支援制度が期待されています。生活者困窮支援自立支援制度は新規相談受付と件数とプラン作成件数が施行後三年間に比べ増えていますが、困窮しているから相談に来ているのに経済的(現金)の支援がほとんどない等問題点も指摘されています。

子どもへの支援では、大阪府羽曳野市では学習支援事業を市単独事業で市内2か所毎週土曜日に行っています。スタッフは市役所職員、学生ボランティア、教員OBがしており、2014年度では延べ1520人が参加したそうです。しかし課題として、普段家庭で色んな役割をしており来られない子ども、自主学習方式なので勉強がそもそもできない子や勉強習慣がついてない子どもには参加が難しいとのことでした。

また保護者がまだ帰ってこない、しかし学校や放課後児童クラブが終わっている夕刻から夜にかけての時間や、学校が長期休暇中に子ども達が安心で安全に過ごせるように夕刻を支える場を開催しているそうです。夕刻を支える場(ちるさぽ)は、主な活動はケア付き食堂や学習支援で、夏休みとか長期休みにキャンプに行ったりしています。月二回17時から20時半まで、大人も子どもも1人200円の参加費で、助成金や寄付で活動しています。寄付には肉屋からのお肉もあり、子どもの好きな肉料理を豪華に出せているそうです。

この「ちるさぽ」が行っているのは、多摩市にもある「誰でも食堂」でなく、「ケア付食堂」です。その違いは誰でも食堂は、オープンで誰でも参加し、地域の多様な人々が交流できるのに対し、ケア付食堂は対象が貧困家庭等課題のある子ども達で、スタッフも一定の学びをしてきた人が子ども達1人1人を丁寧に見ます。どちらにもメリットがありますが、課題のある子ども達は地域や学校で人間関係につまずきがある子が多く、誰でもオープンに参加できる子ども食堂には行きたくても行けないことがあるそうです。多摩市にも1人1人丁寧に見てくれるケア付食堂を検討していく必要があります。

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